介護福祉士国家試験では、頻出傾向にありますので、押さえるべきポイントではありますが、お看取りをさせていただいている施設で働く職員はとても身近です。
終末期のご本人様の状態を把握し、その方のお気持ち、ご家族様のお気持ち、に寄り添える職員になっていかなければなりません。
また、身近な方をなくされたご家族様への心のケアも私たちの務めです。
私自身も大切な人を亡くした経験があります。
私をとても甘やかして、可愛がってくれた、優しい人たちです。
しばらく受け入れられなかったし、家族以外の人間には、正直、関わって欲しくなかった。ほっといて欲しかった。
「何もしてあげられなかった、やってあげればよかった。」
と後悔ばかりでした。
人の死に直面して後悔しないことはないんじゃないかと思います。
完璧はない。
終末期の方が身近になったとき、どう行動するか、何を考えるか？
お看取りに直面したとき、自分はどうしたら良いのか？
そんなことを考えながら、読んでください。
看取りになれすぎて、無神経になるような介護士にはならないで欲しいと、こころから思います。
前置き長くなりましたが、読んでいきましょう。
終末期の介護の目次
・終末期における介護
・身体的側面からの支援
・精神的側面からの支援
・医療との連携
・臨終時のケア
・グリーフケア
・過去問題（第28、30、31回）
終末期における介護（ターミナルケア）
身体的、精神的な苦痛や不安が大きいはずです。
人生の最期までその方らしく
充実した生活を送っていただく
できる限り苦痛を和らげる
穏やかな気持ちで最期を迎えられる
ことが私たちがすべき支援のあり方だと思います。
身体的側面からの支援
・苦痛緩和
できるだけ呼吸が楽な姿勢にし、必要に応じて体位交換を行う。
・清潔保持
入浴ができない場合でも、部分浴や清拭を行い、身体を清潔に保つ。
・口腔ケア
・口腔内が乾燥するため、水分を補給する。
＊窒息の危険もあるため無理な水分補給は行わず、水を含ませたガーゼで口腔内を湿らせる。
・痰が出やすくなり、窒息の危険がある。
＊医療、看護職と連携して痰の吸引を行うか、ガーゼなどで痰を取り除く。
・その他
手足をマッサージするなどして、倦怠感を取り除く。
下肢に冷感がある場合は、湯たんぽや靴下などで保温する。
精神的側面からの支援
・不安や恐怖、悲しみなどの感情にとらわれている場合がある。
傾聴し、否定はせず、共感的態度で接する。
・本人が大事にしている活動を優先的に行なえるようにする。
やりたいことがあれば、積極的にお手伝いさせていただきましょう。
・聴力や触覚は比較的最後まで残ります。
お声かけをしたり、手を握るなどのスキンシップを行いましょう。
・できるだけ家族と共に過ごせるようにする。
ご家族様に毎日来てくださいと強要する必要はありません。
もし、ご本人様が会いたいと希望があれば、お伝えすることは必要かと思います。
ご家族様とゆっくり過ごせる環境を作って差し上げましょう。
医療との連携
介護老人福祉施設では「看取り介護加算」が導入されました。
（施設入所者の重度化に伴い、2006（平成18）年の介護報酬の改正により ）
看取り介護加算
・医師による回復の見込がないことの判断
・２４時間の連絡体制など、医療連携体制が確保されている
・利用者又は家族との同意の下、看取り介護計画が作成されている
などの一定の要件を満たした場合に算定できます。
高齢者の多くは、住み慣れた自宅で最期を迎えることを希望しています。
看取りをめぐる現状（厚生労働省ＨＰより）
在宅でのターミナルケア
家族との時間を穏やかにすごせるよう
不必要な医療処置は行なわず
苦痛の緩和や不安の除去などを中心とした援助を行います。
在宅で介護保険の訪問看護を利用している利用者が特別訪問看護指示書が交付され
１ヶ月のうち、１４日以内で毎日の訪問看護が利用できるようになります。
（ 病状の急性増悪、終末期などで、頻回に訪問看護が必要と判断された場合）
この場合は、介護保険ではなく、医療保険からの訪問看護の提供となります。
臨終時の介護
・できる限り苦痛がないよう、安楽な姿勢の保つなどのケアが必要。
・窒息防止のため義歯ははずす。
・口腔内が乾燥しないようガーゼなどで湿らせる。
・明るさ、室温などの環境を整える。
・家族や親しい人と静かに過ごしていただけるようにする。
・お声かけは最期まで行う。また、不用意な発言をしないよう注意する。
（ 聴力や触覚は比較的最後まで残ります。 ）
・臨終時は、家族との別れの時間がとれるよう配慮する。
（一緒に過ごせる時間はもうほとんどありません。部外者の目を気にせず、最後の会話をしたいはずです。ご家族様だけの空間を作って差し上げてください。）
・死亡の確認は医師が行う。
（医師が死亡診断をした時刻が死亡時刻となり、他の者は判断できません。）
・死後のケア（エンゼルケア）は、家族等との別れの時間が終了してから行います。
・エンゼルケアは、死亡診断後、死後硬直が起こる２～４時間までに行います。
身体を清拭し、その人らしく美しく整える。
グリーフケア（悲嘆のケア、家族等への支援）
終末期における家族の状況
不安や悲しみなどの精神的負担や、介護量の増大による身体的負担を感じています。
家族への支援
・利用者と過ごせる時間を作る
・家族の悲しみや苦しみを受け止め共感する
・利用者と家族が悔いを残さないようにする
などの支援が大切です。
「グリーフ」とは
悲嘆という意味。
身近な人との死別を体験した家族に対し
悲嘆「グリーフ」から
立ち直っていく過程を
サポート「ケア」する。
グリーフケアにおける援助
・大切な人との死別に際して悲嘆することは、ごく自然のことであるという認識を持つ。
・利用者との関係や看取りに関し、罪悪感を持たず肯定的に捉えられるよう援助する。
・家族に対しねぎらいの言葉かけをする。
助言をするのではなく、悲しみを共感するという聞き手の姿勢で行う。
過去問題
（第28、30、31回介護福祉士国家試験より）
第28回介護福祉士国家試験より
終末期で食欲が低下してきた利用者の食事介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを１つ選びなさい。
１.食事の回数を増やす。
２.１回の食事量を増やす。
３.高カロリーの食事を用意する。
４.嗜好（しこう）を重視する。
５.経管栄養を勧める。
解答…4
利用者の意向を尊重し、利用者本位・利用者主体の支援
を行うことは終末期でなくても基本ですよね。
少しの量でも利用者の嗜好（好み）を重視します。
終末期になると嚥下機能の低下や食欲低下も生じます。
そもそも、食べる気にならないのに、高カロリーのものとか
食事回数増やすとかしても、食べたくないもんは食べたくない。
ご本人様の好きなものなら、食べてくださるかも知れませんし
喜んでくださるかも。
第30回介護福祉士国家試験より
問５９
終末期にある利用者を施設で看取る家族への支援として、最も適切なものを１つ選びなさい。
１ 毎日面会に来るように促す。
２ 家族が利用者のためにできることを提案する。
３ 積極的な情報提供は控える。
４ 感情を表出しないように助言する。
５ パブリックスペースを用意する。
解答…2
１.家族と過ごす時間は大切ですが、「毎日」は間違いです。
毎日来てくださる方もいらっしゃいますが、ライフスタイルがありますので、毎日を強要してしまうと、負担になりかねません。
2. 介護福祉職は、専門的な立場で、家族に対して助言は必要。
不安感の除去や具体的に何をすることが良いかなどの助言してさし上げましょう。
3.できる限りの情報提供での不安の除去や納得できる説明は必要です。
4.表出された感情を介護福祉職は大事にして、家族の様々な気持ちにも寄り添いましょう。ご家族様がどんな方なのかもしっかり把握て寄り添う必要があります。
5.利用者と家族が共に過ごす空間としては、パブリックスペースよりも、個室が適切でしょう。ゆっくり過ごせる時間、環境を作って差し上げてください。
第31回介護福祉士国家試験より
問題58
介護老人福祉施設で最期まで過ごすことを希望する利用者への対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 終末期の介護方針を伝えて、意思確認を行う。
2 入所後に意思が変わっても、入所時の意思を優先する。
3 本人の意思よりも家族の意向を優先する。
4 本人の意思確認ができないときは、医師に任せる。
5 意思確認の合意内容は、介護福祉職間で口頭で共有する。
解答：1
本人の意思確認・自己決定を問われています。
「ご本人様がどうしたいのか？ご本人様が主体」であることが重要です。
問題59
終末期で終日臥床している利用者への便秘予防の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 水分量を減らす。
2 腹部に冷罨法を行う。
3 下剤を用いて直腸を定期的に刺激する。
4 座位姿勢を保持する機会を作る。
5 小腸に沿って腹部マッサージを行う。
解答：4
1.便秘予防について問われているので、 冷罨法は適切ではない。
2.便秘予防には、腹部をあたためるが適切なので、水分量を減らすは適切ではない。
3. 終末期患者の下痢は遷延することが多く、下剤の過剰投与、不適切な使用は下痢を誘発する。 脱水の危険性が高く、下痢に伴う、臀部の皮膚疾患にもなりかねず、ご本人様に苦痛を与えてしまいます。
4.座位姿勢により、大腸に消化物が移動することで、便秘予防となります。
座位がとれない場合は、ベッドのヘッドアップをしてあげても良いかもしれません。
5.便秘で便が滞留しやすいのは大腸のS状結腸なので、小腸ではありません。
問題60
Fさん（80歳・女性）は、認知症（dementia）で高齢者施設に10年入所していたが、死去した。
夫（85歳）はFさんが入所中、毎日面会して、Fさんと共通の趣味である詩吟を楽しみ、時間を共に過ごしていた。
夫はFさんが亡くなって1週間後、施設にお礼に訪れて「毎日通うのは大変だったが、今は話し相手もいなくなり寂しい。自分で料理をする気もなくなり眠れない」と涙を流しながら話をした。
Fさんの夫に対する介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 気遣いの言葉をかけて、話を聴く。
2 良眠できる方法を助言する。
3 外食を勧める。
4 趣味に打ち込むように進める。
5 元気を出すように励ます。
解答：1
グリーフケアにおける援助、支援の問題
繰り返しますが、
・利用者と過ごせる時間を作る
・家族の悲しみや苦しみを受け止め共感する
・利用者と家族が悔いを残さないようにする
などの支援が大切です。 この方には、共感が必要なのではないでしょうか？
記事の最後に
親族同士で、ケアし合い、私は、最終的には父と妹のおかげで受け入れることができました。
身近な方をなくされたその方と全く同じ気持ちだといいません。
けど、悲しい気持ちも、後悔も、自分を責める気持ちも、私はわかります。
だから、私は、 身近な方をなくされた方に
助けを求められたら、助けてあげたいし、力になりたい。と思っています。
私をとても甘やかして、可愛がってくれた、優しい人たちです。
しばらく受け入れられなかったし、家族以外の人間には、正直、関わって欲しくなかった。ほっといて欲しかった。
「何もしてあげられなかった、やってあげればよかった。」
と後悔ばかりでした。
親族同士で、ケアし合い、私は、最終的には父と妹のおかげで受け入れることができました。
身近な方をなくされたその方と全く同じ気持ちだといいません。
けど、悲しい気持ちも、後悔も、自分を責める気持ちも、私はわかります。
だから、私は、 身近な方をなくされた方に
助けを求められたら、助けてあげたいし、力になりたい。と思っています。
グリーフケアカウンセラーという資格や、グリーフケアcafeというものがあります。
ご興味のある方は、こちらの記事も読んでみてください
→グリーフケアカウンセラー
→グリーフケアcafe
みなさん、おつかれさまでした。
今回はこの辺で。
では、また。
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「ああ、いい人生だった」と思ってもらいたい。
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